ノラとチロ


ノラとチロの母子にばったり出くわした。チロは慌てて逃げたが、ノラは逃げなかった。一目見て私だと分かるとその場に腰を下ろして視線を逸らした。そんな母親の様子を見て、チロも腰を下ろした。ノラはチロが安全圏ぎりぎりの位置にいることを確認しつつ、私の出方を窺っていた。いざという時にはチロの盾になって闘う気迫を感じさせた。ノラにとって私は無闇に危害を加えるタイプの人間ではないが、百パーセント信頼できるわけでもない。こうして、ノラによる野生の教育は続いている。