海道を行く



富浦海岸、登別市

富浦 とみうら(蘭法華 らんぼっけ)

 登別川の川下から、すぐ西側のリ・フルカ(高い・丘)と呼ばれた丘陵を越えた処が富浦である。リフルカの富浦側は崖のような斜面でそこに電光形の急坂がついて、幕末の記録では難所とされていた(今でも鉄道のトンネルのすぐ山側にその道が残っている)。それでそこをランポッケ(ran-pok-ke 坂・の下・の処)、あるいは終わりの処を省いてランポクと呼ばれていた。日本地名流にいえば坂本である。それに漢字を当てて蘭法華という地名になっていたが、近年富浦と改名された。富み栄えるようにとの願望からの名であろう。

  山田秀三『北海道の地名』北海道新聞社、1984年、393頁



イタンキ漁港、室蘭市





イタンキ浜、室蘭市

イタンキ

 室蘭市内の海岸名。鷲別岬(ワシペッ・ノッ)から西側の、砂浜地帯の称。間にイタンキ岬、通称鯨岩があって、東側の浜がポロ(大)・イタンキ、西側がポン(小)・イタンキと呼ばれた。地名伝説は、あるアイヌが海中の岩を寄り鯨だと思い、その漂着を待っていたが、薪を使い果たし、所持するイタンキ(椀)も焼いたのだが遂に餓死したので、そこをイタンキと呼ぶのだという。ポロイタンキの沖にその伝説の小岩が今もある。だが実際は、鷲別岬とイタンキ岬に囲まれた海岸が椀のように円く見えるので、イタンキと呼ばれたのであろう。それがポロ・イタンキで、その西に並ぶ浜を並称してポン・イタンキと呼んだのであろう。

  山田秀三『北海道の地名』北海道新聞社、1984年、398頁


写真のイタンキ漁港とイタンキ浜は、「ポン・イタンキ」側である。