JさんとOさんとの会話

果樹園みたいな広い庭を構える年配のJさんには今朝初めて会った。以前からその庭の前を通るたびに町内ではめずらしく通りに枝を長く伸ばしたサクランボの樹がイイなあと感じてよく写真を撮っていた。佐藤錦ブランドのサクランボの実を目の前で樹からもいで手渡してくれながら、Jさんは言った。「こうして枝を伸ばしておくと、近所の子どもたちも手が届くんだ。サクランボの実が取れるんだ。子どもたちを喜ばせたくてな。だが、そろそろ切らんとな。」「いい話ですね。私も子どもみたいなもんです。こんな枝振りの樹はほかには見ませんよ。素晴らしい。枝は切らないで下さい」「そうかい。でも、そういうわけにも行かないんだ、、。中も見ていくかい」……というわけで今朝の写真説明にもちょっと書いたように、プラムや桃の果実も見せてもらったりしたのだった。


家庭菜園の域を越えた広い畑を持つOさんちの庭には、樹木コーナーと花畑コーナもあって、樹木コーナーでは今年も野茨(ノイバラ)が営実(エイジツ)と呼ばれる果実をたくさんつけた。ちょっと残念なのは去年よりも強く剪定されたことだ。一回り小さくなった印象を受けた。私のような物好きが異常な興味を示すエイジツはさておき、Oさんは野茨は世話が大変だと言う。「枝が伸びて通りにはみ出しちゃうんだよ」「その方が自然な感じでイイと思うんですけどねえ、、」よく見ると、野茨も、そしてその隣の大きな葉が繁ったハクモクレンの樹も、特に通りに面した側の枝はすべて強めに剪定されている。ハクモクレンを指しながら「これだってもっと枝が伸びてアスファルトの上に木蔭を作ってほしいなあ」と私が言うと、「いやあ、冬に枝に積もった雪が人の上に落ちたりするんだよ。この辺りは私のような老人が多いから、危険でさあ。パッと素早く動けないしねえ。冬の雪がなければなあ、、」「そうですか。仕方ないのかなあ、、」「このノイバラもさ、枝に棘があるだろう。近所の子どもが触れて怪我でもされたら大変だからな。通りにはみ出さないように切ってるんだよ」「昔は怪我しながら自然についていろいろ学んだもんですがね」「そう、でも今は違う」「親が子どもに大切なことを学ばせないように学ばせないようにしているようなところがありますもんね」「学ばせない。そう、そう」


二人との会話を通じて、なるほど、と思った反面、しかし、、とも思ったりしたのであった、、。