西洋風蝶草、世界識別子

先日、田中光花園で風に揺れる姿が気に入って購入した植物を誤ってルリハッカと記載したが、正しくはセイヨウフウチョウソウ(西洋風蝶草)だった。なんとなく違和感が残っていて、調べ直して、判明した。田中さんの、蝶がとまっているようでしょう、と言った言葉も印象的だったのに、早とちりしてしまった。


セイヨウフウチョウソウ(西洋風蝶草, Cleome or Spider plant, Cleome spinosa)。


別名スイチョウカ(酔蝶花)、ハリフウチョウソウ(針風蝶草)、クレオメ。和名ではチョウの連想が強く働き、英名はクモに因むところが面白い。学名のspinosaは棘、針が多いという意味。贔屓目かもしれないが、「蝶」の連想の方が正確のような気がする。蝶から見れば、クモがそこにいるではなく、同類がそこにいる、つまり、そこに蜜があるという信号を発しているのではないだろうか。もしそうだとすれば、白蝶草にしても、この西洋風蝶草にしても、自分で「蝶」まで演出してしまう造形の進化というのは興味深い。植物や昆虫の世界に接近することは、「花」や「蝶」のような「個」が正常な世界識別単位である人間の世界から逸脱して、「花と蝶」の「と」のようなつなぎ目、関係性が世界識別子、世界識別指標のようなものとして機能する世界に触れることになると言えるかもしれない。