Fingermarks of Flowers



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「Fingermarks of Flowers」、「花々の指紋」か。

花たちもまた、指紋のごとき個性を持っていた。

花々は、美を求める人間たちの添え物なのではなかったのだ。かれらは水準以上に抜きん出た命であり、沈黙のうちに完全な自由を許容する命であった。

果たして花々の指紋が示唆するものとは何だろう。

花々の意味深長な指紋を読み解くことは、すなわち自身の心を読み解くことにほかならない。

だから、きょうもまた、生と死が織りなす土壌にせっせと好みの花々を植えつける。


自分ちに庭がないこともあって、ご覧のように、他人の家の庭を覗いてばかりいる。そして花々の写真を撮らせてもらってばかりいる。作庭にいそしむお年寄りたちや奥さんたちの姿に自分には欠けている情熱のような何かを感じていた。そういうことでもあるのか、と丸山健二の写文集『花々の指紋』を見て、読んで(ちょっと言葉が固い気がするが)、すこし腑に落ちるところがあった。もちろん、丸山健二も痛感しているであろう言葉では表せないことが、写真には写っているし、だから、庭を作りつづけるのだろう。