ジョナス・メカスの日記から:闘牛の真髄


On the Essence of the Corrida (bullfighting) with Tony Guerrero and Albert Serra in Arles, Jonas Mekas' Diary, August 5, 2011


フランス南部の古都アルル。7月4日の夜、あるレストランのオープンテラスで闘牛について熱く語り合う見知らぬ二人の中年男。中年といっても、メカスから見れば二人ともまだ若い、子供のようなものだろう。メカスのカメラは終始二人を包み込むように捉えつづける。闘牛には「すべて」があるという。文明と野蛮、生と死、空間と時間、、。闘牛ではすべてが混じり合う。


向かって右のフランス語訛の英語を話す長髪の男は、アンダルシアのジプシーの血を引くトニー・ゲレロ(Tony Guerrero)。トニー(Tony)は愛称で、本名はアントワーヌ(Antoine)。長くMoMA PS1のディレクターを務めたが、今年の3月に辞めたばかりだ。左のスペイン語訛の英語を話す口髭の男は、カタロニア生まれの映画監督アルベール・セラ(Albert Serra, born 1975)。


アルベール・セラの代表作のひとつ、カザルスを連想させる『鳥の歌』(El Cant Dels Ocells, 2008、英題はBirdsong)の予告編を見て彼のセンスに惹かれた。アイスランドで撮影したという岩山に囲まれた草木のない荒涼とした風景の中を三人の黒衣の男たちが黙々と歩いて行く。大地が激しく明滅する。強風に押し流される雲が大地の上にコントラストの強い光と影の帯を投ずるからだ。美しい黒白の映像。多彩に変化する風の音。見えない海の波の音。


El Cant Dels Ocells, Spain, 2008


参照