映画

アンモナイトのささやきを聞いた

京都の知人から、北海道生まれの山田勇男監督の曰く付きの映画「アンモナイトのささやきを聞いた」(1992年、ユーロスペース製作)の上映会の知らせが届いた。私はまだ観ていない。北海道の自然を背景にした映像の見事さを知人は強調する。観たい。興味のあ…

クリスマスプレゼント

Adieu au langage

戯夢人生

戯夢人生 [VHS] ひとの一生とは壊れていくじぶんを雨の日ならまだしも こんな澄みきった空の下でも見ていくことだったのだろうか? 山本博道『ブルゴーニュの赤』(思潮社、1999年)より もう夢なんて一つもないのに 青い空を白い雲が流れていた 山本博道『…

制御できない人生

A Film by Anton Corbijn, CONTROL, 2007 かなり遠くまで来た気がする いつかわが生を 美しく感じる日々の谷に出逢うだろうか たたまれていく母の日傘を こころの中に描いてみる 山本博道「旅立ちて、いま」より、『藁の船に抱かれて』(紫陽社、1979年)所収

水道水

雪かきで一汗かいた後にコップ一杯の水道水を飲む。ふと昔観た映画の一場面が蘇る。仕事を終え、待つ人のいない古いアパートに帰ってきた男は鞄を居間のソファに放り投げ、狭く雑然とした台所に入る。コップを右手に持って、左手で水道の蛇口をひねり、間を…

ベニスに死す

久しぶりにビスコンティの『ベニスに死す』を観る。良かった。

追悼:目の前の風景と対話し続けた若松孝二

若松孝二監督『17歳の風景 少年は何を見たのか』(2004年)より 参照 reminiscence(「南無の日記」2012-10-19) 関連エントリー 『17歳の風景 少年は何を見たのか』を観て(2008年03月15日) 『9.11–8.15 日本心中』と『17歳の風景』(2008年03月15日)

雨の昼下がりに「蓮の花」の歌を聴く

水清き沼に 黄金の 蓮の花 一輪 泥の中より生まれし その清らかな姿 人知れず咲けども 際立つ美しさ その美しさに引かれ 群がる虫ども どの虫がこの花を 射止めるやら 山崎剛太郎訳 マルグリット・デュラス監督の映画『インディア・ソング』(India Song, 19…

ホセ・ルイス・ゲリンとジョナス・メカス

『ホセ・ルイス・ゲリン 映画祭』オフィシャルページ ホセ・ルイス・ゲリン映画祭 特報 渋谷の[シアター]イメージフォーラムで、ホセ・ルイス・ゲリン映画祭が開催中。ジョナス・メカスとのビデオ・レターのやりとりを纏めた「往復書簡」(Correspondencia J…

Jonas Mekas' 365 Day Project in Budapest

2B Galéri ブダペストの2Bギャラリーで6月8日から7月6日まで、私にも縁の深い、ジョナス・メカスの「365日企画」(365 Day Project, 2007)の展覧会が開催される。「365日企画」では、2007年の1月1日から12月31日まで、365日間、毎日1本の短編動画が無料で…

δ(d) / λ(l)の差異

昨日まで、英語のOdysseusはギリシャ系の語彙で、Ulyssesはラテン系の語彙だと私は思い込んでいた。英語のUlyssesはラテン語のUlissesの直系である。しかし、ラテン語のUlissesの素性はラテン系ではなくあくまでギリシャ系なのだということに気づかなかった…

オデュッセウスかユリシーズか

ギリシャ語「Το Βλέμμα του Οδυσσέα」 日本語「ユリシーズの瞳」 英語「Ulysses' Gaze」 ドイツ語「Der Blick des Odysseus」 フランス語「Le regard d'Ulysse」 イタリア語「Lo Sguardo di Ulisse」 スペイン語「La mirada de Ulises」 アンゲロプロス監督…

雪の沈黙を聞く作曲家、Eleni Karaindrou(b.1939)

Eleni Karaindrou*1 エレニ・カラインドルー(Ελένη Καραΐνδρου, Eleni Karaindrou, b.1939)はテオ・アンゲロプロス監督の多くの映画で作曲を手がけてきたことでよく知られるギリシアの作曲家である。私の場合アンゲロプロスの映画の記憶はエレニ・カライン…

アンゲロプロスの声

from Theo on Theo, 2004 国内外の映画やドキュメンタリーの作品(多くはVHS)をざっくりと分類していくつかの段ボール箱に詰めた「映像ライブラリー」をひっくり返してテオ・アンゲロプロスの作品を探した。ピーター・グリーナウェイやダニエル・シュミット…

象徴的な死:アンゲロプロス

隧道(トンネル)の中はいつも夜で、這入り込んだ者はオルフェウスさながらに入口から射す光を振り返らないように出口から差し込む光を待つ。アンゲロプロスは振り返ってしまったのだろうか。誰かが言ったようにカメラは夜を運び、光を迎える。トンネルの夜…

and Film

写真家の鈴木理策さんによる「コダック破綻、とうとう来たか」(「朝日新聞」2012年1月25日)を読んだ。鈴木理策さんはコダックのフィルムや印画紙のやわらかな色調に魅かれた高校、大学時代の古き良き思い出を語っていた。なるほどと思いながら、そのような…

India Songの消息

asin:4879957038 1973年に出版されたマルグリット・デュラスの著作La Femme du Gange(亀井薫訳『ガンジスの女』書肆山田、2007年)の冒頭に出てくる歌「『ブルー・ムーン』。1931年のブルース」が、その前年1972年に公開された(日本では2009年にようやく初…

時間の廃墟、瞬間の経験

asin:4900997250、asin:4900997226 瞬間は極短い時間ではなく、時間という秩序から逸脱した途方もない深みのようなものであることに気づいたのは「いつ」だったか。当て所ない「時間の廃墟」の中を行くような散歩の最中だったか。それもまた「瞬間の経験」だ…

タル・ベーラの「最後の作品」

The Hungarian film director Tarr Béla, 2010.Budapest, photo:Marton Perlaki 1955年ハンガリー生まれの映画監督タル・ベーラ(Tarr Béla)が「最後の作品」と公言した新作『ニーチェの馬』(A torinói ló / The Turin Horse, 2011)が2月11日シアター・イ…

India Song

ひと月ほど前に、マルグリット・デュラスの著作『ガンジスの女』(La Femme du Gange, 1973)の冒頭の場面をとりあげた。「遠くから女の声で、非常に小さく口ずさまれる歌。『ブルー・ムーン』。一九三一年のブルース」(亀井薫訳)が聞こえてくる場面である…

割り切れない夢

asin:4861820243 ミルチャ・エリアーデ(Mircea Eliade, 1907–1986)の短編小説「若さなき若さ」(原題 Tinerețe fără de tinerețe, 1976)はアルツハイマーと診断されたことを苦に自殺を決意した老言語学者が見た夢と現(うつつ)の境界が曖昧な物語である…

スペインのカランダ

A Visit to Calanda, Birthplace of Luis Buñuel from Jonas Mekas' Diary, November 16, 2011 ジョナス・メカスは10月23日にルイス・ブニュエル(Luis Buñuel, 1900–1983)の生地であるスペインのアラゴン州テルエル県にあるカランダの町を訪れ、ルイス・ブ…

ガンジスの女の青い月

asin:4879957038 マルグリット・デュラスの『ガンジスの女』(La Femme du Gange, 1973)の冒頭で女が歌う「ブルー・ムーン」が聞こえてくる場面は素晴らしい。 旅人だ。 広場を横切る。 横切られた広場。 旅人は川に沿っていく。なにも見ていない。歩む。進…

ジョナス・メカスの日記から:詩の本質

WTC Haikus, Jonas Mekas' Diary, September 10, 2011 ジョナス・メカスの9月10日の日記に、‘WTC Haikus’と題した作品が上げられた。9.11を翌日に控えて、メカスの胸のうちにどんな思いがどんなイメージと共に去来したのか。以下のような内容の説明が付され…

ジョナス・メカスの日記から:闘牛の真髄

On the Essence of the Corrida (bullfighting) with Tony Guerrero and Albert Serra in Arles, Jonas Mekas' Diary, August 5, 2011 フランス南部の古都アルル。7月4日の夜、あるレストランのオープンテラスで闘牛について熱く語り合う見知らぬ二人の中…

ニューヨーク州の片隅から:DRYDEN BLOG

今朝、思いがけないトラックバックによってニューヨーク州のロチェスターにあるドライデン・シアターで上映される映画に潔く特化したブログ DRYDEN BLOG が開設されたことを知った。映画の歴史の素肌に触れるような密度の濃い作品紹介に好感が持てる。運営す…

花々の過失 La Faute des Fleurs - a portrait of Kazuki Tomokawa, Musicians of Our Times Episode 2, 2009

ヴィンセント・ムーン(Vincent Moon, born in Paris, August 25, 1979)監督の友川かずきのドキュメンタリー映画。 上映情報 花々の過失アーティスト: 友川かずき出版社/メーカー: インディペンデントレーベル発売日: 1993/02/16メディア: CD クリック: 1回…

映画のための物語のための映画の物語

『続続・辻征夫詩集』現代思潮社、80頁 辻征夫に「バートルビ」と題した散文作品がある。メルヴィルの小説『代書人バートルビー』にちなんだ話である。ブランショやデリダやドゥルーズやアガンベンの哲学的分析より面白い。 ある時「ぼく」は知り合いの映画…

ジョナス・メカス、アンソロジー・フィルム・アーカイブズについて語る

Jonas Mekas On Indie Film Haven Anthology Film Archives(By Billy Gray on The Feast Jan 13, 2011) The Feast: Jonas Mekas On Indie Film Haven Anthology Film Archives(Jonas Mekas' Diary Jan 13, 2011)

ジョナス・メカスの「ピース」公開

My Friends:I have as of now c. 2000 hours of video footage. It goes back to 1988. I decided to share some of it with you. This new series will be called PIECES. You can take a look at these pieces, which I will be adding now and then, by c…