walking pizzicato

身近な街が廃墟に見えるまで歩く。すると隠れていた無数のストリングが現れる。歩くことは世界をピチカートすることだ。



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…家に帰ろう。そこには卵があり、チーズがあり、ワインがある。レコードもふんだんにあって、アンプのつまみをいじればベースのパートを強調することもできる。かくて私は歩みをつづける。ピチカートで。私は幸せなのだろうか? 悲しいのだろうか? なにかの謎に、意味にむかって歩いているのだろうか? あまり考えすぎないようにしよう。私はもはや、希望のごとく張りつめ、愛のごとく満ち足りた、あの基本和声のふるえにすぎないのだから。

  ジャック・レダ『パリの廃墟』みすず書房堀江敏幸訳、2001年、10頁


ピチカートで歩いて家に帰る。そして久しぶりにスコット・ラファロ(Scott LaFaro, 1936–1961)のピチカートを聴く。アンプのつまみをいじってベースのパートを強調して。


Bill Evans Trio - Gloria's Step (take 2)