冥途の道連れ


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 私は長い遍路の旅をして来た。毎日毎日、磯を伝ったり、峠を越えたりしたけれども、何時(いつ)まで行っても道は尽きなかった。(内田百閒『冥途』)


内田百閒(1889–1971)は、死以外のどんな絆も予め奪われた「私」に旅をさせる。道が尽きる果ては冥界であるから、「私」はそれまで尽きない道の中の無数の道を迷子のように彷徨う以外にない道理である。そんな旅にはいつも意思不通の変幻自在の化物のような道連れがいて、まるでバタイユ(1897–1962)かブランショ(1907–2003)のように「お前ひとりでは果ての果てまで行くことはできない」と囁いているかのようだ。