漬け物:楽園の断片


The Pickle: Fragment of Paradise, from Jonas Mekas' Diary, March 1, 2012


ガラス扉に白い文字で「CLINTON HILL PICKLES / 431 DEKALB AVE」と書かれている。ブルックリンに昨年暮れに開店したばかりのピクルス屋、日本風に言えば、漬け物屋のようだ。ところがシャッターは上がり切っておらず、しかも店内は暗い。なんと店頭の歩道に11個の人の腰の高さくらいの茶色の樽がずらりと一列に隙間なく並んでいる。寒そうだが、雪はまったくない。その前を通りかかった若い男が立ち止まって何かを注文したようだ。縁なし帽を目深に被った小母さんが薄いゴムの手袋を左手にはめて向かって左から四番目の樽の白い蓋を開け、赤くて辛そうな汁に漬かったキュウリをプラスチックの容器に手早く入れていく。白い蓋には漬け物の名前が書かれている。メカスはそれを向かって左から右へ順に愛おしむように見ていく。リトアニア時代のお袋の味を思い出しているのだろうか。

New Pickles, Spicy Hot Pickles, Sweet Pickle Chips, Pickled Beets, Sour Tomatoes, Sauerkraut, Giardiniera, Sweet Peppers, Hot Peppers


私には馴染みのSauerkrautがある。珍しい甜菜の酢漬けがある。初見のGiardinieraはイタリア風ピクルスのようだ。九つだから、左端の二つは映っていない。若い男が買い求めた四番目の樽に入っていたのは、Spicy Hot Picklesだということが分かる。会話は断片的にしか聞き取れないが、メカスはSour TomatoesとNew Picklesなどを買い求めたようだ。キュウリの酢漬けが食べたくなった。


関連エントリー