コバノヤマハンノキ(小葉の山榛の木, Manchurian alder, Alnus hirsuta var. microphylia Tatewaki)の果穂
榛の木は染織の世界では夜叉五倍子(やしゃぶし)と呼ばれ、果穂は黒褐色を、樹皮は赤褐色を染め出すのに用いられるという。(追記)夜叉五倍子は榛の木の別名だとばかり思っていましたが、ストラスブール在住の言語学者、小島剛一さんからの指摘によって、夜叉五倍子(Japanese green alder, Alnus firma)と榛の木(Japanese alder, Alnus japonica)は、近縁とはいえ、別種であることが分かりました。
そういえば、志村ふくみ『一色一生』は、突然切り倒されてあたり一面をまるで血を流したかのように樹液で赤く染めていた樹齢百年を越える榛の木の樹皮から、彼女が「榛の木の精の色」と呼んだ「赤銅色」を染め出した印象的なエピソードから始まるのだった。