北の沢川


地上からも地図の上からも消え、人々の記憶のなかからも消え去りかけている場所に惹かれるのはなぜだろう。地面のちょっとした窪みなどに微かに反応する感覚に導かれて歩いていた。

川沿町 かわぞいちょう
 −八垂別 はったりべつ

 昔の札幌の図には八垂別道などと書いてあったものだが、現在はその名が消えてしまった。旧図から見て、今の川沿町がそれらしいと思って、そこに行って古老に尋ねてみたら正にそうだった。川沿町に三本の川があって、名前が何度も変わった。川下からそれを並べると、北の沢−四号の沢、ポン・ハッタルペッ(小・淵・川)、パンケ・ハッタルペッ(下の・ハッタツペッ)中の沢−五号の沢、ポロ・ハッタルペッ(大・淵・川)、ペンケ・ハッタルペッ(上の・ハッタルペッ)南の沢−八号の沢、ヌプ・パ・オマ・ナイ(野の・上手・にある・川)。
 この前の方の二川から八垂別の名が出たのだが、今はそのhattar(淵)の姿はない。古老に聞いたら、山裾に半円形に通っている旧道が昔の豊平川沿いで、北の沢の川口の辺には深い淵があって泳いだりしましたよ、という。昔の地名も地形もすっかり忘れられたのであった。

  山田秀三『北海道の地名』北海道新聞社、1984年、33頁〜34頁

hattar, -i はッタル 水が深くよどんでいる所;ふち(淵)。

  知里真志保『地名アイヌ語小辞典』北海道出版企画センター、2000年(初版1956年)、29頁




藻岩山裾を通る旧道





北の沢川



窪み




クズ(葛, Kudzu, Pueraria lobata Ohwi)。薬効



ヌルデ(白膠木, Rhus javanica)の雌花。薬効



ニセアカシア(偽アカシア, Locust tree or Black locust, Robinia pseudoacacia)、別名ハリエンジュ(針槐)。薬効



オオイタドリ(大虎杖, Giant knotweed, Polygonum sachalinense)。生薬名コジョウコン(虎杖根)、薬効



ススキ(芒/薄, Chinese silver grass, Miscanthus sinensis)。薬効