フェルビナク

「むせび泣く」を連想させる「フェルビナク」という鎮痛成分が配合された湿布と親しくなった。先週土曜日の朝早く、首の痛みで目ざめた。ちょっとした寝違えによるもので、たいしたことはないだろうと高を括っていたら、文字通り首が回らなくなってしまってかなり難儀した。愉しいはずの散歩や雪かきがほとんど苦行と化した。しかし、そのお陰で、自分が普段どれほどキョロキョロと辺りを見回しながら生きているかを再認識することができてよかった。小学生の頃に両親や担任教師からそんなにキョロキョロしてはいけませんと注意されたことも思い出した。かつてある詩人は首の痛みは悪霊が取り憑いたせいで、塩で首を洗うといいと語ったが、悪霊も塩の効用も信じない不届き者の私は、ムセビナクならぬフェルビナクに頼っている。その甲斐あってか、痛みはだいぶ引いた。ところが、腱鞘炎が再発した。タイピングのし過ぎか、写真の撮りすぎか、雪かきのせいか、原因はよく分からない。右手の人差し指、中指、薬指、小指と左手の人差し指、中指が反らすと激痛が走るようになった。指に悪霊が取り憑いて、塩で祓い清めたという話は未だかつて聞いたことはないが、私は7cm×10cmの大きさのフェルビナクが配合された湿布一枚を小さく切って六本の指の第二関節を包むように巻いている。痛みはだいぶおさまった。そう言えば、先日散歩の途中で股関節が痛み出した時、それからブーメラン投げで肩の痛みを覚えた時にもフェルビナクに頼ったのだった。