デジタルメディア入門

受講生の皆さん、こんばんは。

明日はこの授業のひとつのテーマである「デザイン」について是非話したいことがあるのですが、忘れそうなので、ここに書き留めておきます。


それは、デザイン・センスのことです。私はいわゆるデザインの専門家ではありません。皆さんの中にも将来いわゆるデザイナーになる人は一人もいないかもしれません。でもしかし、デザイン・センスは、どんな人にとっても、生きていく上で必要なセンスなのだと私はますます強く思うようになりました。それは自分の身の回りのことから、生活している空間のすべてのレベルに及ぶ大きな問題です。


先日、ある用事で旭川に行くことになりました。ひょんなことから、途中三笠市桂沢湖を経由して富良野市で一泊することになりました。ちょうど始まりかけた紅葉を味わいながら、桂沢湖に着いた僕と女房は湖岸に設置された恐竜の像にビックリ仰天、大笑いしてしまいました。周囲の景色との見事なまでのアンバランス、しかもせっかくの湖の眺望をさえぎるポジション。さらにその恐竜の肢体のアンバランスさ。せめてもう少しリアルな恐竜像ならまだしも許せるのに。美しい紅葉とそれを反映する鏡面のような湖面の美しさを台無しにするこんな無惨な景観をデザインした張本人は誰なのか?僕は怒りに近い感情を覚えました。


山道を超え、盆地の富良野市に入った時、その落ち着いた景観にほっとしました。しかしそれもつかの間、宿泊予定の宿に近づいた時、それまでは周囲の山々、畑と調和していた風景が突如切り裂かれました。とあるパチンコ店の建物でした。そこだけが周囲から思い切り浮いています。それだけならまだしも、それによって、それが視界に入ることによって、周囲の景観も一気に変化する、いわば色褪せる。僕はなぜこんな無神経なことがまかり通るのか、不思議でなりませんでした。


翌日旭川での用事を済ませた僕らは閉館まで残り1時間という、旭山動物園に向かいました。全国的に有名になったおかげで、その時刻でもまだまだ観光客であふれていました。僕らは早足で園内を見て回りました。一言で言って、感動しました。噂に違わぬ、よくデザインされた動物園でした。心のこもったデザインでした。何よりも動物たちが例外なく生き生きしている。そして観客もみんな生き生きしている。あちらこちらから歓声が上がる。すでによく知られていることでしょうが、たくさんある制約の中で旭山動物園は動物たちと人間たちができるだけハッピーに触れ合えるインターフェイスを次々と考案してはかつてない形として実現しているのでした。


私はつくづく考えました。やっぱりデザインは他人事ではない。しかも自分が関わるどんなことにもデザインの問題が控えているのだと。だから、広い意味でのデザインの大切さを一人でも多くの人が学んで欲しいと思います。少なくとも、これは変、おかしい、間違っている、と指摘できる感性を身につけ、できれば「こうすれば良くなる」と提案できるような人になってください。それはどんな仕事に就いたとしても、きっと役に立つことです。