小熊英二、ハイデッガー

受講生の皆さん、こんにちは。

今日は、
1)約束通り、事実からなる現実世界を出発点にして、日常言語を介して、いかに可能世界を拓(ひら)くか、について板書しながら解説しました。事態からなる論理空間と対象(名)の論理形式の把握に戸惑った人もいたようですが、今後も何度も敷衍(ふえん)しますから、ご心配なく。ちなみに対象(名)「三上勝生」の論理形式に関して、「三上勝生は男である」は事実、「三上勝生はダンサーである」は事態、そして「三上勝生は3.14である」はナンセンス、という区別はなんとなく分かってもらえたようですね。

2)資料「論証のタイプ」の説明に入ろうとして、その前段階の「論理語」の説明で終わってしまいました。接続語、指示語、否定語、量化表現の4種類の論理語については今後もトレーニングの中で実践的に身につけてもらいます。また、論理の道具立てとしては、対象(名)と操作(論理語)の二つしかない、という大局に関わる点については、次回も敷衍します。論証のタイプ(演繹、推測、評価)に関しては、前回の資料中「根拠の種類(意味、事実、価値)」も併用しながら、次回に詳しく説明します。

3)小熊英二さんの「ナショナリズムポピュリズム論」とハイデッガーの「形而上学入門」を素材にして、接続表現の省略や筆者の好みによるバリエーションにも注意しながら、恒例の論理的読解トレーニングを行いました。皆さんだんだん、こつがつかめてきたようですね。この調子で続ければ、かなり論理力はつくと思います。小熊さんの最終的な主張は日本におけるナショナリズムポピュリズムにすぎないということですが、そこに至る細部における主張のつながりを再確認しておいてください。ハイデッガーの議論は「哲学する」とは一体どういうことか、がテーマです。同じ意味内容の主張を言い換えながら、またニーチェの主張を引用(援用)しながら、くどいほど反復していましたね。地面を垂直に少しずつ掘り進むかのような文体が印象的だったと思います。「ウィトゲンシュタイン哲学宗教日記」の読解は次回にまわします。内容的にも非常に興味深いものですから、次回までに目を通しておいてください。