音楽と映像の間の通路Tony Conrad:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、46日目。


Day 46: Jonas Mekas

Thursday February. 15th, 2007 12 min. 46 sec.

Tony Conrad
performs at Anthology
June 14th, 1997
(an excerpt)

トニー・コンラッド
アンソロジー
演奏する
1997年6月14日
(抄録)

観客席とステージを仕切る薄いカーテンに、バイオリンを弾くトニー・コンラッドとチェロ奏者が、ステージ床に置かれた光源の逆光の中で影絵のように巨大に映る。演奏されるのはミニマルで部分的にノイジー現代音楽実験音楽。そしてカーテンに映る影の動きは一種のビデオ、映像のように見える。何度も見ているうちに、音楽と影絵が不思議な融合感を生むことに驚いた。コンラッドは「聴く」ことと「見る」ことの間の境界が曖昧になる、というか両者の間に不思議な通路を開くような経験を作り出そうと狙っているに違いないと思った。なかなかやるなあ。

先駆的なメディア・ミックス・アーティストとでもいうべきトニー・コンラッド(1940-)の経歴は英語版Wikipediaに詳しい。ハーバード大学の数学科を卒業後、なぜか音楽と映像の両方で実験的な作品づくりに励んで来た人である。バッファロー大学メディア研究学部で教鞭もとり、作家の肩書きも持つ多才な人だ。日本語では、映像作家・末岡一郎さんによるまとまった紹介がここにある。末岡さんがコンラッドと比較しているクーベルカは、1月15日のフィルムに登場した「メトリック・フィルム」の創始者である。コンラッドは実験映画史においては、メカスも絶賛した飯村隆彦さん(1937-)と並び称せられることが多い。98年来日した折りには飯村さんと対談も行っている。

実験音楽も実験映画も、娯楽とは対極にある「問いかける」パフォーマンスである。コンラッドの活動もまた、いままで何度も言及した60年代ニューヨークに生まれたフルクサスの動向を背景に持つ。要するに、近代的な各種の回路を壊し、本来の複雑な流動(flux)を回復させようとする戦いである。

YouTubeでもコンラッドの作品をいくつか見る、聴くことができる。いわゆる「明滅(flicker)映画」の代表作「Flicker」はないが、明滅系の作品は数本見られる。

YouTube - Tony Conrad - Ten Years Alive on the Infinite Plain
http://www.youtube.com/watch?v=7yCHstLAChs