"I was back" Cat Power:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、4月、117日目。


Day 117: Jonas Mekas
day April. 27th, 2007
4 min.

Cat Power
at the Hiro Ballroom
Feb 5, 2007

キャット・パワー
ヒロ・ボールルームにて
2007年2月5日

シンガー・ソングライターキャット・パワー(Cat Power, 1972)のライブの模様。一曲丸ごと。場所はニューヨークのマンハッタンにある日本食バー兼ライブ・ミュージック・スペースとして有名なヒロ・ボールルーム。キャット・パワーはステージ・ネームで、本名はチャーリン・マリー・マーシャル(Charlyn Marie Marshall)。

ジョージア州アトランタ生まれの通称チャン・マーシャルは1992年20歳でニューヨークに出て、ストリート・ミュージシャンとして叩き上げ、1995年にデヴュー・アルバム『Dear Sir』をリリースした。以降『Myra Lee』(1996)、『What Would the Community Think』(1996)、『Moon Pix』(1998)、『The Covers Record』(2000)、『you are free』(2003)と順調にその名声を高めていった。『you are free』(2003)をきっかけに日本でも知られるようになった。しかし、最新アルバム『The Greatest』(2006)のリーリース後、2006年の冬に神経衰弱に陥り、アルコールに溺れ、自殺の誘惑にかられていた彼女はマイアミの精神病院で治療を受けることになり、その年予定されていたツアーはすべてキャンセルされた。しかし、見舞いに訪れた親友のスザンナ・ヴァプネク(Susanna Vapnek)の尽力によって、マーシャルは再起した。

メカスが撮影したキャット・パワーの姿は病み上がりの再起しつつあるマーシャルの姿である。乾いたアコースティック・ギターやピアノの弾き語り、自由で淡々と独自の世界を築いていくミニマリスティックなスタイル、そして「エーテルのような(ethereal)」と形容される彼女の甘くかすれた声は健在である。昨日のフィルムの隠れテーマだった「人生はなぜこんなに辛いのか」という嘆きの問いに対して、今日のフィルムではマーシャルの人生を通して「人生は考え方次第で実はこんなにハピーになりうるんだ」という解答が与えられている。