Analogy is the end of thinking? Peter Kubelka vs. Raimund Abraham:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、5月、131日目。


Day 131: Jonas Mekas
Friday May 11, 2007
8 min. 35 sec.

Peter and Raimund
discuss the state
of our civilization,
Marija Gimbutas and
Malevich

ペーターライムント
われわれの文明の状態、
マリヤ・ギンブタス
マレーヴィチ
について話し合う

5月8日に続いてすでに六度目の登場であるペーター・クーベルカ2月14日以来二度目の登場の建築家ライムント・アブラハム。共にオーストリア出身。クーベルカの自宅の食堂でテーブルを囲むクーベルカと奥さん、そして姿は見えないライムント・アブラハム。白ワインを飲みながら、ときどき小さな木のまな板の上でハムやチーズを大きなナイフで切っては口に運ぶクーベルカ。カメラはクーベルカを中心に奥さんをぎりぎりフレームに収める位置に固定されている。アブラハムはなぜか敢えて写さない。話し声は聞こえる。

文明や芸術のあるべき姿、あるいは地上の楽園とは何かをめぐって、姿の見えないアブラハム進歩主義者らしい自説を述べるのに対して、伝統を重んじるクーベルカはそれに真っ向から反対する。「現代の芸術は伝統のアナロジーに過ぎない。アナロジーは思考停止だ。伝統を破壊する思考によって新しいルールを生み出すことが重要だ」とアブラハムは主張するのに対して、「それは違う。伝統の反復こそが重要だ」とクーベルカは反論する。

クーベルカは「見せたいものがあるんだ」と言って別室から三体の彫像を持って来る。「その美しいオブジェはアートか?」と問うアブラハム。「ノー、ノー。アートじゃないよ」とクーベルカ。その三つは、大きな器を抱えたアジア系の女性像、牛に見える動物の像、そしてかなり古く見える器を抱えた半獣(下半身は四つ足)の宇宙人のようにも見える女性像。最初の二つはペアになっていて、中国で出土した紀元前200年から紀元後200年の間のもので、女性が持つ器は動物用の餌を入れるものだという。古く見えた像は、紀元前4500年頃のもので、3月9日に「ヴィレンドルフのヴィーナス 」でも偉大な学者として言及したマリヤ・ギンブタスが研究したものでもあるという。マリヤ・ギンブタスはメカスと同郷のリトアニア出身の考古学者。「彼女とは知り合いだった」とメカス。

古ヨーロッパの神々

古ヨーロッパの神々

Goddesses and Gods of Old Europe, 6500-3500 B.C.: Myths, and Cult Images

Goddesses and Gods of Old Europe, 6500-3500 B.C.: Myths, and Cult Images

メカスはその牛に見える動物像がいたく気に入ったらしく、「素晴らしい、素晴らしい」と言いながら何度も手に触れている。アブラハムも「確かに素晴らしい」と共感した後、唐突に、マレーヴィチ(Kasimir Malevich, 1878-1935)の『白の上の白』を見た時の衝撃、クーベルカのフィルム「Arnulf Rainer (1958/60)」を見た時の衝撃を話題にする。