与える力、つなげる力、破壊する力


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文芸春秋下山進さんが藤原和博さんの本『つなげる力』をポーンと送ってくれた。大きな勢いのある手書きサインが印象的な9月4日付けのワープロ書きの推薦文のカラーコピーが同封されていた。編集者(?)としての下山さんの、それこそブログ圏と出版界を「つなげ」ようとする戦略と熱意が感じられる。二ヶ月前にもボブ・バーグとジョン・デイビッド・マンの『あなたがあたえる』 が同じように送られてきたのだった。

「与える力(ギフト・エコノミー)」の次が「つなげる力」。いみじくも両者はつながっている。素晴らしい。下山進さんが送ってくれた二冊の本のそれぞれの内容もさることながら、その二冊を「つなげる」ようにして私に「与えた」下山進さんの行為にも、『つなげる力』の中で藤原和博さんも強調する「つなげる力」すなわち「情報編集力」すなわち「イマジネーション」を感じた。すぐに私のなかでは『与える力、つなげる力』という一冊の架空の本が出来上がった。

『あなたがあたえる』も面白かったが、『つなげる力』は日本の教育と地域という身近な現実に直接関わるだけに、もっと面白かった。何より話が具体的だし、異質な現場に生きる人間たちがどうやってその枠を超えて動き出し前代未聞の運動が展開し出したかということが手に取るように伝わってくる。

『つなげる力』は世間に疎い私の耳にも入ってくるほど有名な藤原和博さんが舵取りした公立中学校を舞台にした教育と地域のいわば再生プロジェクトの報告書である。語弊があるかもしれないが、形骸化した現場をワクワクするようなコミュニケーションの渦が生成しつづける現場に変えた藤原和博さんが身を以て示した「つなげる力」をモットーとする発想(力)と実行(力)には学ぶべきものがいっぱい詰まっていると感じた。

『つなげる力』を一読して、花咲か爺にとっても「笑顔」の眼目は「つなげる力」にこそあるという思いを新たにした。そしてこう思った。「つなげる」とは、本来つながってしかるべき人や情報の間に出来上がってしまった壁を壊して、風通しをよくすること、つまり「つなげる力」は反面では破壊する力でもある、と。藤原和博さんが異質な現場に生きる他人を動かし巻き込んで未曾有の「つなげる力」を発揮することができたのは、実は一番厄介かもしれない自分の中の色んな壁(偏見)を破壊する勇気をもって、「つなげる力」を鍛え上げて来たからではないか。花咲か爺の今後の活動にとっても大いなる希望と展望を与えてくれた一書だった。

追記。下山さんは金ちゃんのところにも送っていた!

金ちゃんは金ちゃんらしく受け止めたみたいだね。「タイミング」ってあるからね。