記録映画保存センター:オーファンフィルムの消息

映画の世界でも、古いフィルム原版の「保存」の問題がクローズアップされ始めた。

同じ内容の記事は同日付けの朝日新聞夕刊一面にも「戦後の記録映画 残せ」という大見出しで載った。すでに昨年から準備を進めてきた保存活動の中核を担う「記録映画保存センター」(事務局長 村山英世)が明日27日正式に発足する。

色んな事情でイマジカや東京現像所など日本の五つの現像所の倉庫などに事実上死蔵状態で保管され、しかも中にはビネガーシンドロームが進行し廃棄されるものも出ているという、約5万本のオーファンフィルムに救いの手が差し伸べられようとしているわけである。「孤児フィルム」とはよく言ったものだ。親(制作者)の都合で、行き先を失った子供たち(映画フィルム)。

ところで、「保存」と一口に言っても、引き取り手や緊急避難場所の確保の問題、修復・複製、ビデオ化やアーカイブ化の問題などが山積している。引き取り手の確保に関しては、著作権や所有権を処理した上で「寄贈」という形をとるが、改正著作権法で映画の保護期間が70年に延長されたことが足枷になる場合もある。緊急避難場所に関して、フィルムの劣化を少しでも遅らせる適度な温度と湿度の環境が必要だ。センターではすでに一部の作品を「長野県木曽町の地元企業の協力を得て、湿度の低い高原地帯に倉庫を確保し、一括して緊急避難させる計画も進めている」という。

それにしても、約5万本である。この一大プロジェクトによって、とりあえず何割のオーファンフィルムが救えるのだろうか。「とりあえず」というのは、このプロジェクトの「保存対策」の時間的展望は何十年、何百年、あるいは何千年なのだろうか。もちろん、「とりあえず」でも、大変意義のあることには違いない。しかし、どうせやるなら、タイムスパンの想定とフィルムやビデオの寿命に関する科学的根拠を照らし合わせた「対策」も必要な気がした。その意味で、センター主導の「保存」思想で語られる「未来」にはどんな具体的展望が籠められているのだろうか。

金ちゃん(id:simpleA)、どう?