スラム街の孤児のようね

気温は高いまま、湿った雪が降り続いている。用事で車を出すために、午後10時頃に雪かきをする。すぐに汗ばむ。積雪は20センチくらいか。30分ほどで一通り終える。九州でも雪が降ったと聞いた。小野さん(id:sap0220)や比嘉さん(id:Ryu-Higa)の住む大分でも降っただろうか。こちらは明日の朝までにさらに数十センチは積もりそうな勢いだ。車のラジオからは、気象情報に続いて、各地の降雪の様子やインタビューの声が紹介されていた。一日で五回目の雪かきをしたという人や明日の成人式が中止になるかもしれないことを心配する二十歳の女性の声も聞かれた。そう言えば、私は成人式には出なかった。窓の外の夜の雪景色を撮るのは難しい。感度を目一杯上げて(ISO 1600)撮る。手ぶれのお陰で、街の灯りが軌跡を描き、それが肉眼に見える光景に近い印象をもたらす。昨日、何かに夢中になっているのを邪魔されたときの私の反応をからかうようにして、カミさんが、まるでスラム街の孤児のようね、と言って笑った。何をそんなに警戒しているの。可哀想な人。余計なお世話だ、とは言わなかった。スラム街の孤児か。前世ではそうだったかもな。大学生の頃、村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』を読んだ時に妙に感応したのを思い出した。新聞の新春企画とやらで、ある女性の作家が妄想癖の悩みを告白していた。妄想癖と言っても、所構わず変な言葉が口をついて出るという症状である。私の「フーちゃん、フーちゃん」に近いと言えば近いが、古風な言葉遣いのフレーズが飛び出すことが多いらしく、買物などでたまたま傍にいてそれを耳にした人はぎょっとするという。そんな悩み相談に回答していたのは道化師の道を邁進し、自分の葬儀も道化師として全うしたいと語るアーティストで、彼の回答が奮っていた。あなたの口をついて出る言葉はすべてご先祖様から届いたものだというのだ。あたなはそれにちゃんと応えて会話すべきである。そのうち、あなたが知らないうちにご先祖様が小説を書いてくれることだってありえなくはない。そんな荒唐無稽な、でも、一理ある粋な回答だった。そう言えば、時々このブログでも私の知らないうちに、風太郎がエントリーを書いたことがあった。他人事ではないと思ったのだった。