K劇場の秘密

Kさんちの庭はもとの静けさを取り戻していた。昨日は倒れたり、ひっくりかえったりしていたマスコットたちも、ちゃんと起きていた。ただし、以前とは微妙に位置取りを変えていた。サラブレッドを先頭にカメ、ラッコ、ダルマさん、ウサギという順番に並んでいた。二人の老演奏家たちは相変わらずしんがりを務めていた。そしてKさんの分身夫妻も相変わらず舞台の袖で見守るように立っていた。

近づいてしゃがみこんで彼らを撮影していたら、Kさんがニコニコしながら家から出てきた。私に何かを伝えたい様子だった。私の存在に気づいた奥さんに急かされたという。ほら、ほら、三上さんが来てるわよ、早く行って話をしてきなさい、と。???

「Kさん、これ、いいですねえ」
「なあに、近所の親子がさ、立ち寄っては嬉しそうに馬を撫でていくんだよ。それを見るのが楽しみでねえ、、」
「そうでしたか。私も毎朝元気をもらってますよ、、それにしても、次々と増えましたね」
「ああ、でも、これで打ち止めかな」
「ひとつひとつに深い意味が籠められているような気もしますが、、」
「いやあ、それは、まあ、、」

とKさんはニヤリとして、言葉を濁した。

「ところで、三上さん、あんた記者かなんかかね?」
「え?」
「いつもカメラもって歩いてるから、取材でもしてるのかと思ってさ」
「いえいえ、でも近いかもしれません」
「実はね、多分興味あると思うんだけど」

と言って、Kさんは、心の前立腺に触れるような、耳が勃起するような話をしてくれた。なんと、Kさんは、ある土地に<トンチンカンの里>という名前の館(やかた)を持っていると言うのだ! 暇があったら訪ねてみてほしいと言う。見てのお楽しみだそうだ。

「ヘー、そうなんですか! それは是非訪ねてみます!」

そういうわけで、近いうちにアップされるであろう<トンチンカンの里>レポートをお楽しみに!

そう、そう。Kさんちの庭ではもうボケ(木瓜, Flowering Quince, Chaenomeles speciosa)の小さな実がたくさん生っていることに気づいた。「今年もミツバチたちが一生懸命働いてくれた」というKさんの言葉が印象的だった。熟したら御裾分けしていただけることになっている。