エゾノコリンゴ、ノイバラ








エゾノコリンゴ(蝦夷小林檎, Manchurian Crab, Malus baccata var. mandshurica)の果実の面々。かなり「来ている」。ソローに倣って舌の野生を目覚めさせるために、賞味してみるつもりだったが、情けないことに、口に入れてみる気にはなれなかった。若い枝には棘がある。バラの仲間の証拠。



久しぶりに苅谷さんに会う。私がずっとエゾノコリンゴと呼んできた野生の林檎、山林檎の呼び名について聞いた。道東の北見出身の苅谷さんは、やはり「サンナシ(山梨)」と呼び習わしてきたという。以前釧路出身のあるおばあさんに尋ねたときも「サンナシ」と呼ぶと言っていた。「ちっちゃいのは、マメサンナシと呼んどった。たしかに豆みたいだからな。あっはっは。あれも接ぎ木すれば大きくなる」「あれで林檎酒を作ったという話は聞きせんか?」「さあ、聞いたことないなあ」「林檎酒」という言葉に一瞬、苅谷さんの目が輝いた。



エイジツ(営実)と呼ばれるノイバラ(野茨, Multiflora Rose, Rosa multiflora)の果実。野茨は野薔薇とも呼ばれるように、野生の薔薇。エゾノコリンゴとは親戚みたいなものだ。



この野生のバラの果実を思い切って賞味した。前歯で果皮を噛み切ると果汁が溢れて舌先に触れたと思った瞬間、予想外にも、濃厚な薔薇の香りが口内に広がり、全身にえも言われぬ快感が駆け抜けた。眠っていた野生の味蕾が目覚めた気がした。近いうちにエゾノコリンゴも試してみよう。