セバスチャン・メカスの写真集:home sweet home


home sweet home


ジョナス・メカスの新しいサイト(http://jonasmekasfilms.com/)で、彼の息子セバスチャン・メカスのウェブサイト“home sweet home”を知った。2004年から2007年にかけて世界各地で撮影された驚くほど率直で新鮮な写真がざっくりと編集された「写真集」と言っても過言ではないウェブサイトである。タイトルの“home sweet home”は日本でも「埴生の宿」あるいは「楽しき我が家」として知られるイングランド民謡の題名からとられているが、セバスチャンは彼が訪れたどんな場所にも“home”を見出していることが写真からビンビン伝わって来てとても気持ちがいい。ホームページ(トップページ)には次のような題辞(epigraph)が置かれている。

I aim here, with this site, to present an ecstatic portrait of my life.
The epic monument that you see before you, stands as a joyous
celebration to friendship, family, love, poetry, song, dance, wine,
adventure, and all things by which life gleams with heavenly beauty.


このセバスチャン・メカスの写真集を見ながら、かつてソロー(Henry David Thoreau, 1817–1862)が、「最も興味深く美しい事実は、最上の詩である」(1852年2月18日の『日記』)とか、「探究心の旺盛な人間にとっては、最もありふれた事実 [homeliest facts] こそ、常に最大の喜びである」(『コッド岬』61頁)などと述べたことを思い出していた。普段私たちはそれとは正反対の事実に目を奪われ、振り回され、下手をすると自分まで見失いがちであることを思うと、「最もありふれた事実」の大切さとそこにしっかりと足をつけることの難しさに改めて気づく。セバスチャンは、訪れた先々の土地で暮らす人たちをまるで自分の家族か友人のように親密にとらえ、彼らの暮らしの細部にすーっと入って行き、質素な住居や衣服や食べ物などに偏見のない深い関心と非常に繊細で暖かい眼差しを向けている。セバスチャンの写真は「最もありふれた事実」こそが実は「最も興味深く美しい事実」であり、しかも「最上の詩」でもありうることを静かに証明しているように感じた。