女の世間(Women's Society)と男の孤立(Men's Isolation)の間


ある集まりを終えて楽しそうに語らいながら家路につくご婦人たち。宮本常一の言葉を思い出す。

 女はまた、共同体の中で大きな紐帯(じゅうたい)をなしていたが、それは共同体の一員であるまえに女としての世間を持ち、そこではなしあい助け合っていた。(宮本常一「女の世間」、『忘れられた日本人』岩波文庫、105頁)


忘れられた日本人 (岩波文庫)

忘れられた日本人 (岩波文庫)

Women acted as an important bond that held the community together, but before being members of the greater community they had their own society in which they conversed and helped one another.(Miyamoto Tsuneichi, Women's Society. In 2010. The Forgotten Japanese: encounters with rural life and folklore, translated by Jeffrey S. Irish. p.90)


The Forgotten Japanese: Encounters with Rural Life and Folklore

The Forgotten Japanese: Encounters with Rural Life and Folklore


ごく私的な印象だが、退職後の高齢の男たちは世間的に孤立する傾向が強く、それに対して女たちは幾つになってもこうして集まったり、あちこち訪れたりして、家の外で楽しい時間を過ごす工夫をしているようである。いわゆる「共同体」はとっくに崩壊したといえるかもしれないが、「女の世間」だけは生き残っていると感じることがある。私が興味をおぼえるのは、そんな孤立した男たちと女たちの世間の間を自在に行き来できるような圧倒的少数派の高齢の男である。