写真の真実

次のAの写真の人物をよくご覧いただきたい。




この人物は、次のB、C、Dの写真の人物と同じ人物に見えるであろうか?








私にはどうしても同一人物には見えない。眉毛の形も唇の形も違う。Aの写真の人物は眉毛は描いたように見えるし、口髭は付け髭のようにも見える。どこか「男装した女」のように見えるのだが。それとも、、。


実はAの写真は松原一枝著『幻の大連』(asin:4106102552)に掲載された「偶然、同船した甘粕大尉(提供、毎日新聞社)」とキャプションのある写真である。最初にこれを見た時、その不自然さに目を疑って、吹き出してしまった。これは別人であると直観した。だが、まさか別人ということはあるまい、こんな顔の頃があったのだろう、と思い直して違和感を拭い去ろうとした。ところが、見るたびに違和感は増幅していくばかりであった。そこで甘粕正彦が写っているとされる佐野眞一著『甘粕正彦 乱心の曠野』(asin:4104369047)や角田房子著『甘粕大尉』(asin:4480420398)などに掲載されているB、C、Dの写真とじっくりと見比べてみた。


人の顔はここまで変るものだろうか? 変るとすれば、整形手術をした場合など、よほどの事情があったはずで、それはそれで興味深いことである。しかし、私の直観が正しいなら、もしかりに何かの手違いで別人の写真が掲載されたとするなら、甘粕大尉と間違えられそうな人物とは一体誰だろうか、というこれまた興味深い疑問が生じる。私はいろいろと想像をめぐらし、かつて「男装の麗人」と呼ばれた女たちの写真を調べたりもしたが、結局は分からなかった。Aの写真は私の中では甘粕正彦をめぐる記憶に着床せず、一枚の写真記録として漂流したままである。南無さん、どうですかね?


参照


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