トリカブトを生けるおばあさんに倣って


エゾトリカブト蝦夷鳥兜, Monkshood, Aconitum yesoense Nakai


ダチュラ朝鮮朝顔)やトリカブトには独特の美しさがあると常々感じてきた。一昨日の朝、数年前の記憶をたよりにして、ある空地を訪ねた。ああ、まだ咲いていた。夢中になってシャッターを押していた。エゾトリカブト。すると突然背後から声をかけられた。何撮ってるの? 振り返ると二匹の白い小型犬を連れたおばあさんがいた。これです、トリカブト。ああ、トリカブトかい。この間摘んで、部屋に生けてるよ。遊びにきた友達からそれは毒だと言われたけど、気にしない、と言って彼女は笑った。トリカブト殺人事件ってありましたしね。でも、ちょっと妖しい感じだけど、綺麗な紫ですよね。そう、そう、綺麗だよ。私はおばあさんに倣って花と果実のバランスのよい茎を手折って胸のポケットに挿した。おばあさんはこの近くにはヤマブドウも生っているし、フキも採れる。そのフキはラワンブキとは違っていい味だと教えてくれた。あっちの方を探してごらん。そう言い残して、素直に言うことを聞かない二匹の白い小型犬を無理矢理引っ張るようにして立ち去った。その時摘んだトリカブトの花は二日目にして萎れはじめた。