黒い影法師になるための恋の葬り方


恋はせいぜい二年しかもたないって、そんな詩を書いた人がいた。ジャン・ジュネはどうだったかな?

二年もたつと恋は死んでいて
白いシーツのベッドに亡骸が
横たわっているんだって
恋の日々に
優しさと友情をデリケートに
育てたカップルだけがそれをスマートに葬って
悲哀の微笑を浮かべて丘の方に それから
古風なパラソルと流木のある海の方に−−

ごらんなさい
春の海辺で
沖の貨物船を眺めている穏やかなひとたち
黒い影法師の

  辻征夫「COUPLES」から