日曜日の昼間だというのに、事情があって、近所のコンビニで昼飯に手頃な弁当を物色していた。なんとなく、おかずに鮭とコロッケと肉団子と竹輪の磯辺揚げと昆布の佃煮が入った海苔弁当に決めた。何が決め手だったのかは自分でもよく分からないのだが、どうも竹輪の磯辺揚げに惹かれたような気がする。レジに持っていくと、よくある促販戦略によって、客の視界に必ずや入るスペースに、三種のスイーツ、甘味菓子がいかにもさりげなく置かれていた。いつもはその手にはひっかからないぞと心を引き締めるのだが、その時は余りに空腹だったせいか心が緩んでいたのだろう、気づいた時にはすでに後戻りできない、どれにしようかという選択の瀬戸際に私は立たされていた。三種の菓子のなかには見たことのない小さな丸々としたお菓子があって、マリリン・モンローのように私を強烈に誘惑していた。名称は二段構えの説明のように長く、堂々としたもので、「ふわふわ和風マシュマロ/味わいきなこクリーム」である。最近、この手の命名法が増えているような気がするなどと思いながら、その見るからにふわふわとした質感とこの上なく穏やかな姿形と「きなこ」の文字に惹かれて、「これも」と買ってしまった。情けないったらありゃしない。まだ女子高生のように見える冷めた表情のレジ係の女性の顔が一瞬綻びかけたのを私は見逃さなかった。製造元をみると、「竹下製菓株式会社」とあり、住所は佐賀県小城市だった。こいつははるばる佐賀県からやってきたのかと思いがけない感慨に浸りながら、未だ見ぬ佐賀県の小城市の景観を「小城」を手がかりにあれこれ想像しながら、パクッと一口で食べた。その味は、名前をいささかも裏切るものではなく、文字通りふわふわした食感を基本にして、ほんのり甘いマシュマロと濃厚なきなこのクリームが、体験したことのない甘味の二重奏を奏で、小さい割には大いに満足した。今後、佐賀といえば、このきなこマシュマロを連想せずにはいられないだろう。