HASHI's Journey


今年もまた、写真家HASHIこと橋村泰臣さんから近況報告をかねた寒中見舞いとともに「Journey」と題した印象的な写真が送られて来た。草木のない荒涼とした岩場の上を行く七人の家族らしき人のシルエット。覆い被さる厚い雲の下で光に向かって歩いているかのようだ。のどかなピクニックの途中の光景のようにも見えるが、たとえ実際にそうだったとしても、それを見て、こういう一瞬を捕らえたHASHIの目には、例えば被災地で危険を避けて避難する家族のイメージが重なっていたような気がしてならない。もう後戻りできない心象風景? ニューヨークが本拠地の橋村さんは一昨年東京に「HASHi国際写真塾」を開き、若手の育成に乗り出した。塾生さんたちは橋村さんの予想をはるかに超えて成長しているらしく、今年はニューヨーク研修を計画しているという。日本とアメリカの狭間、ビジネスとアートの狭間で激しく揺れ動きながらも逞しく前進し続けてきた橋村さんの「旅」は大震災と原発事故によって切り裂かれたベールの向こう側から射す光に向かってさらに加速する予感がする。