亡父の遺品のカメラの一台、OLYMPUS 35DC(1971)。プログラム自動露出システム。F. ZUIKO 40mm F1.7の大口径の明るいレンズ。
父が死んだ時、遺された多くのカメラの内、ハッセルブラッド等の高級機を自分には縁が無いものと思って手放したことをちょっと後悔している。私の手許に残ったのは今ではリサイクルショップなどで二束三文で取引されるこんなカメラばかりだが、時間がたつにつれて、なぜか愛着がわいてきて、手放すことは考えられなくなっている。私自身はこのカメラを使ったことはたった一度しかない。夢を見ているように、その時の朧げな映像が断片的に浮かぶ。友人を戸外で撮った。後にプリントされた写真を見た彼は「よい写りだ」ととても喜んでくれた。その写真は、ネガも、私の手許にはもうないが、その時の彼の笑顔は脳裏に焼き付いている。なぜか、このレンズで撮りたくなるときがある。