先日某所で、久しぶりに金平糖を味わう機会に恵まれた。テーブルの上に何気なく置かれた白い陶器の蓋をとってみたら、カラフルなコンペイトーが入っていて、びっくりした。今時、金平糖とは、なんと珍しい! そう思う間もなく、懐かしくて嬉しい気持ちで心は一杯になった。しばらく眺めてから、白いのを一個口に運んだ。舌の上で転がして、小さな突起(金平糖作りの職人さんたちの間では「イガ」と呼ばれるらしい)が、少しずつ溶けてゆく感触と、氷砂糖のさっぱりした甘さが口中に広がるのを味わった。至福の時間だった。
金平糖は氷砂糖が原料の、この上なく素朴な糖菓であるが、このような形状に仕上げるには熟練の技が必要で、かなりの手間暇もかかるという。その辺のことは、京都の金平糖専門店「緑寿庵清水」のウェブサイトに詳しい。
ところで、「金平糖」の語源はポルトガル語の「confeito」であるとたいていの国語辞典には書かれているが、手許にある白水社のポルトガル語辞典によれば、「confeito」は「糖菓、ボンボン、キャンデー」を幅広く意味する普通名詞である。実際にポルトガルにはかなり粗い形状の日本の金平糖に似た糖菓が古くから存在し、それが室町時代に日本に入って来た時に「confeito」と紹介され、当時の日本人はその菓子だけを指して「コンペイトー」と呼ぶようになったのだろう。したがって、逆に日本語の「金平糖」と等価なポルトガル語の単語は存在しない。