猫の客


猫の客



猫の客 (河出文庫 ひ 7-1)



Le Chat qui venait du ciel [Poche, 2006]



見覚えのある近所の野良猫がある日隣家に飼われた。チビと名づけられ、鈴のついた首輪をはめられ、飼猫になったその猫は、なぜか毎日のように庭を通って「私」の家を訪ねてくるようになる。「私」と妻はそれぞれのやり方ですこしずつチビとの交情を深めていくが、ある日(その日はたまたま二人が一緒に遅くまで外出していた日だった)を境にチビはぱったりとやってこなくなった。後日隣家の夫人から実はチビは不慮の事故死をとげていたことを知らされる。「私」と妻は悲しみに打ち拉がれる。ところが、その事故死は謎に包まれていた。あんな場所でそんなふうにチビが事故に遭うはずがない、よほど特別の理由がないかぎり、、。物語はチビの謎に包まれた死をそのまま包み込むようにして終わる。作者の視点がまるで昇天するチビの魂に乗り移り、地上を俯瞰しているかのような感触が残る。そして、チビが意外な場所で死んだ、その特別の理由について、思い当たる節があることに気づく。