珈琲時光(Coffee Time)



阿久根佐和子「カメラに人生の喜びを託した、孤独な乳母の物語」(『IMA』2013 Spring Vol.3)。


「写真って歌よね」
「薮から棒に何だよ?」
「ヴィヴィアン・マイアーって人の写真を見てて、そう思ったの」
「どういうことだよ?」
「歌は彷徨える魂を一時的に鎮める働きがあるでしょ。写真にも同じようなところがあるのよ。ヴィヴィアンは歌う代わりに写真を撮ってたんだって確信したの」
「よく分かんねーな」
「相変わらず鈍いわね」
「、、、」

ヴィヴィアン・マイアー(Vivian Maier)

1926年アメリカ・ニューヨーク生まれ。フランスとアメリカを行き来しながら、シカゴで乳母兼家政婦として、さまざまな家庭に住み込みながら、趣味で写真を撮り始める。自由な時間に街中を歩いては当時の人々の様子をストリートスナップに収め、また世界中を旅した。死後、アパートから膨大な数のプリントやフィルムが発見され、話題を呼ぶ。撮影した写真は約10万点。2009年没。83歳。現在、その生涯の映画化が予定されている。(『IMA』2013 Spring Vol.3, 39頁)