中学生たちと歩く

朝起きてカーテンを開ける。明るい。窓の外の雪景色は昨日と変わらないように見える。自宅正面スペースに駐車している車を見る。すっぽりと雪に被われている。寝ている間に降ったのだと分かる。よく見る。5cmくらいだ。昨日と同じ軽い粉雪。散歩に出る。身の引き締まる氷点下の空気は昨日よりも「透明度」を増した。今朝の藻岩山(→ Mt. Moiwa, December 17th, 2007)。「白髪」が増えたように見えた。

散歩の往きは原生林や藻岩山をぱちぱち撮影しながら、登校中の中学生の流れを遡り、帰りは狭い歩道を彼らの間に挟まれて彼らとともに下った。風太郎に手を差し延べる子や私に挨拶してくれる子もいる。彼らの若い息吹を身近に感じながら歩くのは楽しい。私の方から声をかけると、戸惑ったり、怪しんだり、固まってしまう子もいるのが面白い。

なんと表現したらいいのだろう。冷気が朝の陽射しにほんの僅かに温められつつある微妙に深みのある空気感。触れると冷たい雪も温かく見えるから不思議だ。

A musical letter from Keith Sanborn:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、12月17日、351日目。


Day 351: Jonas Mekas
Monday, December 17th, 2007
1:45 min.

a video postcard
from Keith Sanborn
with love
from Russia

キース・サンボーン
からのビデオ・ポストカード。
ロシアより
愛をこめて。

冒頭「キースからメカスへの音楽レター」と英訳のついたロシア語の字幕が入る。
背後に書棚の見える一室で固定カメラを覗き込む眼鏡をかけ帽子を被ったキース。「やあ、同志メカス。これは私から君への音楽の手紙だ」と彼はロシア語で挨拶する。英語字幕が入る。そしておもむろに、掌にすっぽり入るほど小さな内部が丸見えのおそらく手作りのオルゴールをカメラの前にかざして、「演奏」を始める。ゼンマイ式ではなく、手動でシリンダーを回転させている。可憐なメロディーのごく短い、約18秒の曲(未同定)が終わる。やや間があって、「ノスタルジーは古びた方法ではない」とひと言今度は英語で言う。ロシア語字幕が入る。 最後に「2007年12月8日/マーシャに大いなる感謝を!」と英訳のついたロシア語の字幕が入る。マーシャ(Masha)が誰かは不明である。

***

キース・サンボーンの活動に関しては、wuemme experimental filmに要を得た日本語の解説がある。そこで紹介されているデジタル複製時代における所有権と著作権を問題視する試みとしてのビデオ作品「ワルターベンヤミンによる複製技術時代の芸術はキース・サンボーンに語りかける」("The Artwork in the Age of its Mechanical Reproducibility by Walter Benjamin as told to Keith Sanborn" Video, 1996)をこちらで見ることができる。YouTubeをテーマにした会議のビデオ・ドキュメント ‘Video Vortex: Responses to YouTube’ Conference, Argos, 05.10.07で自作を論じるキース・サンボーンを見ることができる。

Napoleon: How to Make War

Napoleon: How to Make War

また、キース・サンボーンのアレクサンドル・コジェーヴ(Alexandre Kojève, 1902-1968)に傾倒した思想に関しては、「歴史の終焉?」(The end of history?)という写真と翻訳テキストによる「ウェブ作品」から窺うことができる。それに関連する特筆すべき仕事として、一方に『Napoleon: How to Make War』(1998)の翻訳があり、もう一方にはギー・ドゥボールGuy Debord, 1931-1994)、ルネ・ヴィエネRené Viénet)、そしてジル・ヴォルマン(Gil J. Wolman)らの「状況主義者(Situationist)」の映画の翻訳がある*1

なお、キース・サンボーンの経歴、伝記的事実に関しては調べがつかない不明な点が多いが、Argos blogによれば、現在はプリンストン大学でヴィジュアル・アーツの講義を持っている。

*1:状況主義とはフランスにおけるシュールレアリスム後の運動としての「文字主義Letterism)」の発展形態である。「状況主義者名簿」参照。