bookscannerさんの挑戦

本の電子化をテーマに、一般にはほとんど知られていないスキャンの実態、未だあまり理解されていないグーグルの戦略、すなわちネットの「あちら側」で「本が本を読む(Books Connect)」作戦が着々と進行している事実の分析から、「図書館」を巡る国策レベルに及ぶ大問題に至るまで、大変示唆的な議論を展開しているbookscannerさんが、いよいよ、アンシャンレジーム(旧体制)を支える古い思想の根幹にメスを入れた。(私の堅い文章とは対照的にbookscannerさんの文章は内容は非常に高度だが、平易に書かれていて非常に読みやすい。センス抜群!)
「やっぱり、「アナロジー(類推)で考えてはいけない」のかも」http://d.hatena.ne.jp/bookscanner/20060828/p1
bookscannerさんは梅田さんによるウェブ進化を認識するための「七大原則」のひとつである「アナロジー(類推)で考えてはいけない」を援用しつつ、ニュートン力学的な対象の理解のアナロジーでは量子力学的対象を理解することはできないのと全く同じで、本が電子化されて蓄積されていく「電子図書館」という対象は、現実の図書館のアナロジーでは理解することができないことを説得的に論じている。非常に面白い。
梅田さんが『ウェブ進化論で訴え続けてきたように、今、ネット世界、ウェブ社会で起こっている「変化」は、従来のIT観やビジネス観、さらには人生観、世界観からの類推(アナロジー)では決して認識、理解することはできず、「暗闇の中の跳躍」をするように「丸ごと体で理解し」なければならないのである。
私も含めてもう若くはない層にとっては厳しすぎるこの状況は、しかしながら、受け入れるほかない条件である。
昨日取り上げたアエラの茂木さんとの対談でも、梅田さんは、2002年からウェブ進化を認識するために「丸ごと体で理解する」ことを実践してきたことを改めて述懐している。それは自分を実験台にするようなものだから、とても勇気の要ることだが、さすがに茂木さんは梅田さんの生活を賭した「実験」を「そういう生活自体に批評性がありますよ」と評価している。しかしながら、日本のアンシャンレジームと常識(古い思想)の壁は厚く、こと「本の電子化」に限っても、bookscannerさんが憂えているように、日本の将来は決して明るくない。「日本はこんなんでいいのかな、」。
「ダミーを追う日本」http://d.hatena.ne.jp/bookscanner/20060829/p1