私は橋村奉臣その人に会って、自分を本当に大切にすることが実は最も大変な闘いであることを痛感し、再認識した。それは他人の中だけなく、己の中の偏見や常識や知識とも闘いながら、ちっぽけな種のような自分のオリジナリティを必死に育てることだからだ。そのために、まるで空の器のようになるまで、いつも自分をさらけ出せるところまでさらけ出して、彼は必ず来るもの(未来)を待つ。
HASHIさんは人との出会いを決める「一瞬」に「永遠」を察知し、それがいつも「既に見えた未来」のように体験し続けてきた人なのだと思う。だから、「人生はタイミングだ」と彼は一切の迷いなく断言する。さらに「すべてはタイミングだ」とまで言い切っていることを実際にHASHIさんにお会いする前に知った私は、かなりヌルい解釈を以前書いた。そして実際にお会いしてみて、そのタイミングに全身全霊をかける姿を目の当たりにして、私はタイミングを外してしまった言い訳が一切許されない人生を生きることの意味を悟った。
私はHASHIさんの「呼び声」に半分しか応えられなかった。
今私の手元にある写真集『STILL LIFE a moment's eternity 一瞬の永遠』、『HASHIGRAPHY Future Deja Vu 未来の原風景』、そして立松和平著『十万分の一秒の永遠』に、HASHIさんがそれこそ一瞬の気合いの中で空気を切るように筆を走らせて遺してくれたサインを見つめながら、私は上のような思いを新たにした。