美しい電線


毎朝藻岩山を撮影している。今朝はいつも以上に電柱と電線がなぜか気になった。

この坂道はわが界隈から国道に出るために下らなければならない道のうちの一番急な坂道。以前紹介した滑り止め剤「スコップ」がすでに少し撒かれていた。写真では勾配の実感は伝わらないと思うが、実際にはかなり急な印象があり、スキー場のゲレンデで言えば、傾斜20度台半ばの中級者コースなみである。雪の状態によっては、車は見事に滑落することになる。危険だ。私は冬の間はこの坂道を避けるようにしている。ちなみに、ほかの大抵の坂道にはロードヒーティングが設置され、降る先から雪は解けるのでほぼ安全である。大雪の日には融雪が追いつかない場合はある。

電線が過密に乗り入れた電柱は以前から気になっていた。景観(landscape)の観点からは好ましくないと思ってはいるが、存在しちゃってるものをいつまでも冷たい目でみているのは粋じゃないと思ったりする私は毎朝電柱電線を敢えてフレームから外さずに写真を撮ってきた。そのややグロテスクな姿に屈折した愛着すら覚えていた。ところが、昨日ある電柱の真下に立ったとき不図見上げた眼に電柱の姿が非常に新鮮に映ったのだった。そして思わずシャッターを切った。

今朝の散歩の復路で不思議な変化が生じた。なぜか電柱と電線のグロテクスさの印象が解けるように消えて、その奥に隠れていたらしい美しさに気づいてしまったようだった。それは市民生活の生命線としての機能を果たすために設置されて、後からも次々と追加された結果の姿、形態である。一見乱雑で景観や視界にとっては最悪のノイズのように感じられる電柱を中継してどこまでも繋がっていく電線たちは、意外な表情を見せてくれる。機能美と言えるのか、美しい幾何学的な形態を生み出している箇所も少なくない。





積雪によって、路上観察がほぼ不可能になった分、カメラに直結したような私の眼は自然と上を向き始めたようだ。