前回までで、標準的な命題論理の道具立てのすべてについて、それぞれの使い勝手を一通り学んだことになります。専門的にはそれを体系、特に公理系と呼びます。体系、システムというのは、世間では結構曖昧に使われていますから、ここで最も厳密な体系、システムの感覚をつかんでおけば、今後色んな場面で出くわす体系、システムの「程度」も見当がつけられるようになるでしょう。
さて、これまで学んできた標準的な命題論理の「体系」は次のようでした(『入門!論理学』p.146)。
否定の導入則(背理法):「A」を仮定して矛盾が導かれるとき、「Aではない」と結論してよい。
否定の除去則(二重否定取り):(Aではない)ではない→A連言の導入則(かつ入れ、結合):A、B→AかつB
連言の除去則(かつ取り、分離):(1)AかつB→A (2)AかつB→B選言の導入則(または入れ):(1)A→AまたはB (2)B→AまたはB
選言の除去則(消去法):(1)AまたはB、Aではない→B (2)AまたはB、Bではない→A条件法の導入則(ならば入れ):「A」を仮定して「B」が導かれるとき、「AならばB」と結論してよい。
条件法の除去則(前件肯定式):A、AならばB→B
これが「体系」であるとはどういうことか、を今回は、これまた世間では結構曖昧に使われている「証明(する)」とはどういうことかを体験的に知ることを通して、感覚的につかむことを目指します。
なお、前回の講義では「否定とはそもそも何か」を少し踏み込んで考えるために、以上の「体系」に、大前提としての矛盾律と排中律、連言の否定と選言の否定はどうなるかを示すド・モルガンの法則、それから条件法の否定、そして対偶と、「否定」がからむ論理法則を睨んでみたわけでした。否定論は一時棚上げにして、今回と次回で、命題論理の体系そのものとそこにおける「否定」の意味の理解を一段深めてから、再検討に入りたいと思っています。