ジョナス・メカスによる365日映画、9月22日、265日目。
Day 265: Jonas Mekas
Saturday, September 22nd, 2007
3:47 min.
It's all very
quiet and the sky
is blue by the
East River, on this
last day of summer---
静けさや
青空に沁み入る
川の声、
この夏最後の日…
ちょっと遊んで、メカスの大好きな俳句風に意訳してみた。夏の最後の日とは秋分の日(Equinox)、すなわち秋の最初の日の前日であるから、今年は9月22日、つまり今日である。
地元の川、イースト・リバー河畔で遊ぶメカス。河原の小石、岸辺に穏やかに打ち寄せる波の様子、河岸の大きな石を覆う「海藻」を接写する。岸辺に打ち寄せる川の水の音、「川の声」に混じって、河畔で過ごす人びとの話し声が心地よく聞こえる。
河原の流木に腰を下ろして、小石を拾っては、愛おしそうに、ためつすがめつして見るメカス。突然、メカス以外の人物がメカスを撮影していることに気づく。その人物は不明だが、メカスをフレームに収めながら、ロングショットで周囲を撮影し始めた。メカスの背後には河原からなだらかに続く草原で寛ぐ人びとが、さらにその向こうにはウィリアムズバーグの旧い建物が見える。メカスが両手で包み込むように持っていた小石を両手の隙間を開けて少しずつ零す様子に笑い声で反応する撮影者。低いハスキーな女性の声だ。上を見上げるメカスの視線の先を確かめるように、カメラは空を、青空を撮る。
岸辺の大きな石の上に腰掛けて、川面を見つめている小さな男の子の後ろ姿のロングショット。川向こうにはマンハッタンが見える。
ちなみに、イースト・リバーは厳密には海を繋ぐ「海峡(a tidal strait)」である。
だから河岸の石に海藻が着床していた。メカスは「川」という名の海の一部を見て、「海の声」を聴いていたことになる。水と陸が狭い範囲でせめぎあう場所を英語で"sound"という。日本語では海峡、瀬戸、小湾、入り江、河口等のことである。"strait"は比較的狭い"sound"である。海を繋ぐ細い水の道は陸を分断する境界でもある。人はその境界に橋を架ける。