カピバラの写真、どんど焼き


昨夜遅くに論文をほぼ書き終えて、「砂漠の真ん中」のような場所に立って周囲を見回して、寝た。朝起きて、論文は、今日中に片付けてしまおう、と思いながら、散歩に出た。曇り、のち小雪。藻岩山は雪に烟って見えなかった。散歩中、微かな違和感が生じた。何だ、これは、と記憶のどこかをまさぐっているうちに、論文の着地点というか帰還場所を「銘記」していなかったことに気づいた。散歩から戻り、朝飯を食べてから、机の前に座ると、机上のプリントアウトした論文の上に「光」が射していた。なんとタイミングよく昨日届いた吉増剛造さんからの年賀状だった。ブラジルに棲息するカピバラという珍しい動物の写真。吉増さんご本人の撮影になる写真。森のなかから陽の当たる草原に出てきて、周囲に全感覚を開いて、何かを待ち構えているようなカピバラの姿が非常に印象的な写真。この写真を撮った吉増さんの同じような姿が浮かんでくる。その「光」を感じながら、論文の着地点、帰還場所を銘記する最後の一節を一気に書いた。

実は同じカピバラの写真を私は2006年の奄美自由大学に参加した折りに、吉増さんからブラジルのお土産としていただいたのだった。そのときに感じたことを書き記したエントリーがある。

この二年以上前の記憶と、さらに遡ること十年以上前に、吉増さんを介して初めてジョナス・メカスの存在を知ったときの記憶が蘇り、不思議な感慨にとらわれていた。でも、これで、間接的にではあるけれども、吉増さんにも恩返しできるような気がしていた。

最後の一節を書き終えてすぐに、風太郎をおいて散歩コースを再び藻岩神社に向かった。小雪は止み、晴れ間が広がっていた。今日はどんど焼きの日。散歩のときにはたき火の準備中だった。初詣と変わらぬ人出だった。お札や注連縄が次々と赤い炎の中に投じられてゆく。大きな炎を見るのは一年ぶりだった。