くまさんのところで、くまのパディントン(Paddington Bear)の深淵な素性が話題になっていた。
パディントン(Paddington Bear)はペールーからの移民熊だそうだ。知らなかった。「移民」といえば、私の年来のテーマでもあり、ぐっときた。しかも、くまさんによれば、パディントンは諸先輩とは違い、まるでリトアニアからの移民ジョナス・メカスがニューヨークで暮らすようにロンドンで都会生活を送るのだ。しかし、くまさんが問いを投げ掛けているように、
ペルーで叔母さんと暮らしていた頃の名前は何だったのだろう。まさかロンドンの駅名ではあるまい。我々は実は、この有名な熊の本名すら知らないのだ。
その通りだ。ところで、パディントンで思い出した。三年前アメリカで一年間一人暮らしをしたときに、アパートの部屋には前住人が置き去りにしてくれた同居人が二匹いた。
この手の趣味のない私は最初は困惑した。捨てるには忍びない。もらってくれそうな人もいなかった。結局一年間名前も知らない彼らと暮らした。そのうち、いつの間にか、外から帰ると「ただいま」とか、出かけるときには「行ってきまーす」とか声を掛けている自分に気づいたのだった。アメリカを去るとき、その部屋を引き継いで住むことになった人が彼らを快く引き取ってくださった。その後彼らがどうなったかは知らない。今でもまだあのアパートの部屋に住んでいるだろうか。