シナノキの戦いは意外な結末を迎えた

札幌、朝のうち晴れ。ときどき強い風が吹いた。あちらこちらで桜吹雪に出会う。見とれた。数本の桜の木の下では桜吹雪のなかにしばらく佇んでビデオを撮ったが、ちゃんと写っていなかった。

散歩後半、サフラン公園に近づいたとき、嫌な予感がした。いつになく大勢の大人たちが集っている。シナノキ・アートの影もない。そうか、町内清掃の日か。知らなかった。同じ町内の隣の斑の方々が公園のゴミ拾いのために集まっていたのだ。清掃が一段落して、藤棚の下で皆さん一休みしているところに私は鉢合わせたのだった。顔見知りの方も初めてお顔を拝見する方も次々と私にではなく風太郎に挨拶しに来る。風太郎はしゃべれないので、私が通訳する。今年13歳になります、とか、最近は脚の関節がちょっと痛いんです、とか、大きく見えるけど半分は毛なんです、とか。

そんなことより、一瞬ですべてを悟った。あの幹に立てかけた折れた枝は一本残らずすべてきれいに片付けられていたのだ。「シナノキの戦い」は意外な結末を迎えた。まるでゲームがリセットされてしまったかのような拍子抜けする感覚に襲われた。力が抜けた。こりゃ、仕方ないなあ。昨日のシナノキへの誓いも宙づりになったような気分だった。とはいえ、むろん戦いはシナノキの折れた枝をめぐるものだけではない。私は次の戦いにむけて気持ちを新たにするのであった。

午前遅くから雲行きが怪しくなり、そのうち雷が轟き始め、雨が落ちて来た。大降りにはならなかった。午後からは、雨も止み、晴れ間が広がった。目まぐるしく空模様の変化した一日だった。