辺境


「朝の水路」(1987年8月7日 インドネシア・ブドン島・バウバウ)

辺境を歩く私は、いつもにこやかで楽しい。私は東南アジアが好きだし、海が好きだし、魚が好きだし、歩くのが苦にならない。その自分の気に入った方法で辺境についての常識を肥やしていきたいと想っているのである。
鶴見良行『辺境学ノート』まえがき)

雨上がりの町を歩く。辺境は遠くにあるのではない。自分の住む町もまた辺境である。心のなかにも辺境がある。灯台下暗しにならないように、私は今住む町をすみずみまで歩く。そうすることで心のなかの辺境にも近づくことができる。私はこの町が好きとは言えない。数年前までは大嫌いだった。しかし、歩くことを自覚的にはじめてから、嫌いではなくなった。