40年前の記憶

朝の散歩で通る道すべてに勝手に名前を付けている。夏から秋にかけて道端でノラニンジンが咲き誇る「野良人参通り」に面したM平さんちの庭ではスプリング・エフェメラルが次々と開花している。昨日、今日と「未同定」と記録した花はM平さんちの庭に咲いている。今朝、立ち止まって花を眺めていた私に気付いたご主人のM平さんは「好きな花があったら持ってっていいよ。増えすぎて困ってるんだ」と声をかけてくれた。「ありがとうございます。でも、植える場所もないですから。写真撮らせてくださるだけで十分です。」「そうかい。中も見ていくかい。」そう言ってM平さんは庭の中に案内してくれた。通りからは見えない場所に高山植物を含めて見たことのない花が三種あった。「フクジュソウが増えすぎちゃってさ。アリが巣に運ぶんだよ。ところが、アリが途中で放り出したやつがあちこちから生えちゃってね。」「へー、そうなんですか!」話の方に気を取られ、写真はうまく撮れなかった。この土地に住みはじめて40年になるというM平さんは毎朝庭の手入れに余念がない。「40年前か? 道路もまったく舗装されていなかったな。橋? ああ、粗末な橋しかなかったよ。今の橋ができたのは、札幌オリンピック(1972年)の頃だよ。40年前の写真? ないねえ。撮っとけばよかったな。そうだな。今も撮っといたほうがいいかな。」M平さんの話に耳を傾けながら、今住む土地の40年前をいろいろと想像していた。M平さんは風太郎のことには触れなかった。