種(たね)に根づく


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こんな変わった言葉がある。

人は土地に根づくのではなく、種に根づく(佐野眞一『大往生の島』85頁)

これは周防大島に昔から伝わる島民の「華僑的」とも言える海洋民的性格をよく表した言葉だという。特に沖家室漁民には、魚を追ってどこまでも行き、どこであろうとおかまいなく住みついてしまうという海洋民的性格が色濃く流れているという(107頁)。海の遊牧民か。なるほど。しかし、狭義の土地ではなく、種に根づくというときの「種(たね)」が気にかかる。それは直接的にはこの世の生業を指しているのかもしれないが、ふと、死やあの世も含めた人間にとって最大の時空間を指しているようにも思えた。そこに根づいてさえいれば、地球上どこにいこうが同じで、死ぬことすら大した事ではないというような境域。それが「命」ということなのかもしれないな。