始原的な欲望


吉田喜重


1993年12月13日〜16日にかけて、4夜連続でNHK教育テレビで放映された「ETV特集 吉田喜重が語る小津安二郎の映画世界」の第3回を学生たちと一緒に観る。全4回の各テーマは次の通りである。

第1回 サイレントからトーキーへ 映画との出会い 反復とずれ
第2回『戦中戦後の軌跡/映画が言葉を発するとき』
第3回『『晩春』と『東京物語』/限りなく開かれた映像』
第4回『その短すぎた晩年/無秩序な世界につつまれて』


東京物語』(1953)をみるたびに、笠智衆東山千栄子が演ずる不器用に寄り添う老夫婦の孤独な姿になぜか強く胸を打たれる。吉田喜重小津安二郎は制度や性差を超えた人間存在の「始原的な欲望」を見据えていたと語る。それはあたかも小さな孤独な生き物どうしが触れ合うときに感じるであろうような「温もり」であり、また、母親の胎内の「懐かしさ」である、と。


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