歩道橋の上のアジール

和賀正樹著『大道商人のアジア』の本編でマレーシアの「犬売り」を商売にする劉玉東さん(2002年当時67歳)を紹介するページの下段の注に並んで「盲人の菓子売り」と題した小さな写真が掲載されている。


和賀正樹著『大道商人のアジア』160頁


大道商人のアジア

大道商人のアジア


そこには「歩道橋の上は、どの国でも一種のアジール(避難地)のようだ。2000年 クアラルンプール」という言葉が添えられていて、大変興味をそそられた。明記されてはいないが、おそらくその盲人の菓子売りたちは歩道橋の上でひと休みしていたのではなく、そこで商売していたのだろう。和賀正樹さんはその様子から「一種のアジール(避難地)」を連想した。その連想の隙間を想像で埋めてみたくなった。


歩道橋の上にはどんな風が吹いていただろう。


目が見えるなら、左右を確認して道路を横断することができる。しかし、目の見えない人にとっては、たとえ音声案内が流れる信号機つきの横断歩道であっても、交通量の多い道路であれば、横断するのは怖い、危険である。おそらく彼らは普段から歩道橋を使っていた。ある時までは他の「大道商人」のように、歩道橋の上なんかではなく、下の歩道で商売していたのではないか。しかし、目の見えない彼らにとって、「下界」は騒々しく、色んな危険に満ちてもいる。その点、歩道橋の上なら、幾分マシであることにある時気づいた。ここで商売しよう。もちろん、「下界」に比べたら、人通りは少ないし、稼ぎも少ないかもしれない。でも、「下界」よりは安心して商売ができる。


二人の盲人の菓子売りの写真を見て、そんな粗筋が浮んだ。


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