写真に関する四つの引用


  Jonas Mekas, I HAD NOWHERE TO GO, Black Thistle Press, New York, 1991

写真は、なにかを思い出そうとして、とじるまぶたに似ている。
(中略)
思い出そうとまぶたをとじるかわりに、カメラでへだてる。

  石田千「つねに見送るひと〜鈴木清『流れの歌』復刻に寄せて」『出版ダイジェスト』白水社、2010年11月11日

うしろ姿はなによりも、視線を奥へ導く強い力線として働いている。

  宮川淳「眼と距離」『新潮美術文庫8 ブリューゲル』1975年

ひとは自分自身をふつうは、鏡にうつして正面から見る。でも自分を、他人がぼくを見る場合のように正面から想像しようとは少しもしない。つまり、自分自身を正面から見るために他人の背後に身を置こうとは少しもしない。

  ジャン=リュック・ゴダール「欠如について語る」『ゴダール全評論・全発言III 1984–1998』奥村昭夫訳、筑摩書房、2004年