Jonas Mekas, I HAD NOWHERE TO GO, Black Thistle Press, New York, 1991
写真は、なにかを思い出そうとして、とじるまぶたに似ている。
(中略)
思い出そうとまぶたをとじるかわりに、カメラでへだてる。
うしろ姿はなによりも、視線を奥へ導く強い力線として働いている。
ひとは自分自身をふつうは、鏡にうつして正面から見る。でも自分を、他人がぼくを見る場合のように正面から想像しようとは少しもしない。つまり、自分自身を正面から見るために他人の背後に身を置こうとは少しもしない。
ジャン=リュック・ゴダール「欠如について語る」『ゴダール全評論・全発言III 1984–1998』奥村昭夫訳、筑摩書房、2004年