EARLY TIMESの薔薇


廃庭では薔薇はまったく目立たない。冬の間に雪の重みで押しつぶされ、勢力を増すレンギョウの陰にすっぽりと隠れ、枝の一部は地面を這い、かろうじて陽のあたる場所でわずかに花を開いている。雨に濡れた地面に触れ、少し土のついた薔薇の花は私をしばらく見上げていた。その小枝を持ち帰り、EARLY TIMESの古いショットグラスに生けた。

 かぜのはな(昭和二年)


このつめたい底にすわって
眼をひらく、
すべては かぜのはなです。


  『大手拓次全集 第二巻 詩II』223頁